悪業! 狐のお仕事 一章
一幕
★(1)
『わたしは、その日はじめてあの人に逢ったのです。』
七月四日 天王寺公園付近
(あーもう、どうして自動販売機がないんですか‼︎)
蝉の声。
(あつい……)
(美術館……)
★(2)
(水がもしかしたら、のめるかもしれない)
美術館内
(誰もいませんね……)
ポスター ドイツの美術
(ドイツ? あの、ドイツ?)
(ドイツって、たしかヨーロッパのくにだったような)
★(3)
展示室。
(おおきな絵ですね……これは? へんなちょび髭のおじさんです。なんだか、物悲しい瞳をしています)
隣に、私服の近藤政宗。
(変わった人ですねー)
★(4)
六花「あ、あの……」
近藤「いかがなされましたか?」
六花「お、お、お」
近藤「?」
六花「こ、この、おじさんは誰れなのですか!?」
近藤「……独裁者、アドルフ……ヒトラー……」
(悪い人なのかな)
★(5)
コツコツと歩き回る多動な六花。
ポケーッとしながら、あほずら。
★(6)
(なんだか、どれも暗くてやだなあ……)
(わたしは、こんな作品はきらいですし‼︎ あ、でも)
(なんとなく、惹かれるものがあるような? って……喉が〜……)
「? あのかた……いなくなってます」
★(7)
事務所
六花「うあーあああん‼︎」
百華「あーうるさいのお」
六花「あと十圓が二枚あれば、コカコーラが飲めたのですよ」
百華「あ、そ」
タバコをふかして、興味ない九尾の狐。
★(8)
百華「アドルフ……のお」
六花「知ってるのです?」
百華「悪のカリスマじゃ! 癌の撲滅にとりくみ、クルマを市民にも買える商品にし、ドイツ人を手玉にとって、ロシアやフランスやイタリアに勝利した」
六花「へー! なれほど? まるで桃太郎です」
百華「……」
★(9)
六花「あ! そうです! よかったら、クダラさんも、いっしょにドイツの美術展へいきましょうよ!」
百華「あ"?」
百華「六花よ! わしは友だちかの?」
六花「……ど、どうして……」
百華「おぬしは仕事をする部下、わしは上司」
(うっ…………)
★(10)
パソコンをつかう百華。
(じゃ、じゃあ! わたしは、どうすれば……友だちでもなく、口が悪いこのひとと、仕事なんて、やっていけるのかな……)
(うう、な、なんで……キーボードの音がやけに、うっとうしい)
百華「六花、いったん帰れ」
六花「は、はへ? どうしてまた……」
★(11)
百華「ふん、悩みをもちこまれてもたいしょに困る」
百華「迷惑」
(そこまていわなくてもいいのになぁ)
六花「い、いえ、まだ仕事が……」
百華「ちっ……二度と同じことを言わせるではない、迷惑じゃ」
蝉の声。
みんみんみんみん
★(12)
(なんにも、うごく気が起きないですし、モヤモヤします……わたしって、だめな狐なのかな……)
(お父さまは、わたしは真面目に勉強している天才だってほめてくれて、お母さまは、あなたは美しいわ、とほめてくれましたのに)
(わたしは、馬鹿の天才なのかな…)
★(13)
車が行き交う。その雑音へ耳を傾けている六花。蒲団に寝転みまくらを抱く。
(わたしはきっと殺されてしまう。誰かに殺されてしまう。誰だろう、そんな予感がします)
(ああああ! これって、うつのひとみたいじゃないですか! )
(ひとまず、百華さんにメールを)
★(14)
六花「LINEでしたなら、だめなのかな?」
六花<ごめんなさいあとでもいいのでおへんじください。
百華< 六花さん 返信は不用です
六花<あわかりましたまた明日からがんばります。
★(15)
(うう、夢のマイルームなのに……すること、NASA…)
スマホで検索する六花。
“アメリカ航空宇宙局(アメリカこうくううちゅうきょく、英語: National Aeronautics and Space Administration, NASA)は、アメリカ合衆国政府内における宇宙開発に関わる計画を担当する連邦機関である。1958年7月29日、国家航空宇宙法 (National Aeronautics and Space Act) に基づき、Aeronautics, NACA) を発展的に解消する形で設立された。正式に活動を始めたのは同年10月1日のことであった。”
★(16)
(……………?)
(………………………………??)
(???????)
六花「う……ど、どういった、こと、なんじゃかな????」
★(17)
「ツイッターを、はつどう‼︎」
@uki_duice
RT NASAはなんですか?。
>横から失礼NASAは陰謀を働く左翼。
@uki_duice
RT NASA宇宙人つたらいたらし!、
★(18)
お風呂。
ガラスのコップに歯ブラシと歯磨き粉。外から月明かりが差している。
湯船。
六花「そっかあ〜 NASAっての、左翼の宇宙人を捕まえた団体なんですよね! ぐひひひ」
(あしたはこの知識で百華さんを驚かせましょ〜〜‼︎)
★(19)
事務所。神社の裏にあり、気温は三十度を超えている。蝉の鳴き声が響く。
六花「だっだから〜‼︎ NASAは、左翼の団体で、宇宙人を捕まえた団体で、NASAは」
百華「この漫画はギャグ漫画じゃったかのお……」
六花「だからNASAは‼︎」
★(20)
百華「……」
〈To be continued……〉
🌾二幕
★(1)
『あなたは、カラオケが好きですか?。わたしは、はじめてのカラオケで、たいへんなことになったのです!。とても、たのしかったのに、、、。あなたは、カラオケくらい、と思うかもしれませんね。でもずぅぅぅぅぅぅと長い間(あなたにとっては四ヶ月)、皇居で暮らしていましたから、世間知らず、なんと歌うことの喜びを、しりませんでした!。歌懸(そいね)ちゃんは、涙がこぼれるほど歌がうまくて、わたしはいまでも、おもいだして、ときどき泣いてしまいます。』
★(2)
七月十九日 雨 事務所
タバコを吸っている百華。パソコンを使っている六華。
六花「同調効果っていうんですね〜〜へー」
百華「爪切りはどこじゃ」
六花「周りの人と同じ行動をしていると安心し、逆に自分が正しいと思ってもほかの人が異なる 行動をしている場合には不安になる、わけです!」
百華「(爪切り……)みたのじゃな、資料を。ならば話しははやい。人間というのはのお、せいぜいななじゅうにんほどしか、仲間とおもえないんじゃ。ゴリラはごじゅう、サルはにじゅう、敵愾心(てきがいしん)というのは、そこからきておるぞ」
★(3)
ニヤけてきもい顔の六花。
六花「詐欺(どろぼう)してお金がたんまりですね! わかります、わかりますよ!」
百華「ソーシャルゲームのユーザーを鴨に広告に“ユーザー待望の攻略サイト” と、だせばよい」
六花「うへひ、ひどすぎますよ! わたしも、遊んでいるのに‼︎」
★(4)
百華「わしのところへ、はじめにやってきた狐は、“仲間” が口癖じゃった……」
六花「一番目の弟子、っていうやつですね!」
百華「(こやつは、どこでそんなことばを、おぼえてくるんじゃろうか)
百華「ふん、懸け歌が好きじゃった。目がみえなくての」
六花「かけうた?」
★(5)
百華「万葉の時代の、といってもわからぬか。わからなくてもよい。ずうっとむかし、男女は集まり唄を詠んだりして、結ばれていたのじゃよ」
六花「へー! カラオケ、みたいな話ですね」
百華「じゃろう」
★(6)
神妙な表情の百華。
百華「 わしがよいとする唄をひとつ……ぬは玉のくらきやみ路にまよふなりわれにかさなむ三つのともし火…………後醍醐天皇」
六花「、、、あの、意味不明なんですけど‼︎」
百華「おい!」
六花「、、、、すぴーすぴー」
百華「…だらしないのぉ…」
★(7)
(……あ! で、でも…………目がみえないですよね。それって、不便じゃないですか!)
六花「あ、あの、会ってみたいのですけども!」
やる気ムンムンな六花。
百華「これ、仕事中じゃ」
(よし、仕事後!)
★(8)
奈良県 橿原神宮(かしわらじんぐう)駅前
空は夕暮れに赤く染めらてゆく。
虹がかかっている。
(ううー! はじめてきました、なんだかこわい……あ!)
鳥居の影は薄くて軽く六花へかぶさる。
六花「うわ〜! 鳥居‼︎」
最新のカメラで写真を撮る六花。
★(9)
浴衣姿。
ほっ! と穏やかな表情でわらう。自販機にてお茶を購入し一息。
ベンチへ座る。
(うーーー‼︎ まわりのみんな、浴衣なのに、避けていますね……和装は珍しいのかな……浴衣姿だから⁇⁇)
(お、鬼はずかしい)
(な、なぜ‼︎ )
★(10)
目にやさしい水色な和装服姿の少女が背後にいる。
歌懸(そいね)はギター用バッグを背負って登場。
歌懸「ボク そいね〜っていうんやけど、もしかして、ゆきさん?」
★(11)
歌懸「ゆかた?」
六花「え?」
六花「??」
歌懸「もしかしてなあ〜〜浴衣かなぁて」
★(12)
歌懸「なつやなあ〜〜」
♪なつがすぎ かぜあざみ
♪わたしのこころ なつもよう
六花「うっ、なんでしょう?」
歌懸「井上陽水。
♪ゆめがさめ よるのなか
★(13)
歌懸「ねえ〜〜 こんやはボクとかんてつしよな〜〜」
(…………??)
♪ いつかは きいてみたいな
♪でも きっと できないね
♪ あのひみた はじめのうみ おぼえてる?
六花「やさしい……声です」
★(14)
カラオケボックス。
オレンジジュースを飲む六花。かなり緊張した顔。
歌懸「はよいれてなあ〜もう、じかんないねん」
六花「ど、童謡しか」
?
六花「童謡くらいしか歌えません‼︎」
歌懸「そっかあ〜〜じゃ ボク一曲め
めたるぎあさんから
すねーくいーたー♪
★(15)
♪ What a thrill with darkness and silence through the night.
なんという恐ろしさ 夜を貫く闇と静けさ
What a thrill, I'm searching and melting to you.
なんというスリル あなたを探し── あなたの中に溶けてゆく
What a fear in my heart... but you're so supreme.
私の心は恐ろしさでいっぱい それでも、あなたは最高!
歌懸「じゃあ〜〜ゆきさんのばん」
(ギャップありすぎ‼︎)
★(16)がっがーん!
六花「どどうしよう、どうしましょう。歌えません‼︎ うう〜さいきんのはやりもわからないですし、むかしのも歌えません……ご、ごめんなさい」
歌懸「そっかあ」
歌懸「にきょくめ わんおく のう すけあーど
I wanna bring it bac……(略)
★(17)
朝。
雀の鳴き声。
歌懸「ふあ〜〜」
死んだ顔の六花。
★(18)
事務所。
タバコを袖へ詰める百華。
百華「ふーん。手を振り別れたわけじゃなあ、よかったのお」
六花「なにが、よいものですかああああ! シヌかとおもいましたーよーだっ!」
事務所をとびだす六花。
爆笑。
百華「くくくく!」
★(19)
御堂筋線の電車内。
(もー! わたしのしらないことばっかし! どうして……やっぱ、馬鹿の天才なのかなわたし)
★(20)
百華「よーだっ! か……これでよい」
タバコを吸っている九尾の狐。
〈To be continued……〉
🍉三幕
★(1)
『わたしはうちのめされました。わたしは、自分がいかに醜いのかをわかっていませんでした。あなたは、美しさなんてものを顔や姿に求めているかもしれません、ですがそれはちがうのではないでしょうか?。だって、百華さんというかたは悪ではあったけれど、わたしはだいすきのです、いまでも、つよさを教えてくれたから。』
★(2)
八月六日。 晴れ
神社裏にある事務所。森はしんとしている。クーラーはない。窓が開けてある。
百華は黙祷をしている。
子猫を抱えている六花。
六花「たったったいへんじゃないですか!?!?」
百華「ん、なんじゃ……」
★(3)
眼をつぶる。
百華「チッ ダメじゃダメ!」
六花「な、なんでですかあ〜! かわいそうですか!」
百華「猫はトキソプラズマ、瓜実(うりざね)など病気をもっとるからの」
※瓜実 サナダムシのこと
六花「いやです! いやいやいやいや、飼わせてくださいよ〜!」
★(4)
テレビは玉音放送を特集している。
百華「梅結びもできぬのにか?」
六花「いやです」
百華「バイアスからみても、ネコなど飼えぬ。わしらは猫よりさきに死ぬからの」
六花「いやです!」
百華「黙れ」
六花「だまりませんですし!」
百華「二度目はないがの」
六花「…………っ」
(いつもいつも偉そうに)
六花「百華さんのばかあ‼︎」
「あなたも、わたしも‼︎ どこにも居場所はないのに、おなじアワレな畜生ですな‼︎」
百華「六花……‼︎」
六花「この、たんそくちんちくりん狐さん‼︎」
事務所をとびだす六花。
百華「二度目はないがの」
六花「…………っ」
★(5)
阿部野橋駅前
行き交う人混み。猫を抱えた六花。
(とはいったもののですよ。どこにいけばいいんでしょうか)
おばさんとぶつかる。
「チッ! 気をつけなよvixen! 尻尾きりなさい!」
(………ううう)
(わたしのせいです。わたしは馬鹿の天才、どうして拾ってしまったの)
★(6)
歯をくいしばる六花。するどい眼光に光あり。
「ちがう! 命より大切なものはないですし!とうぜんのおこないでしょう」
★(7)
鼻歌を歌う六花。あてどなく歩いていく。車の音、会話の声。飛行機が上空を飛ぶ。
♪ まいごのまいごの こねこちゃん
あなたのおうちは どこですか
(あ! そうです、そうですよ! 交番へとどければおとしたひとがあらわれます!)
★(8)
天王寺区警察署
鬼道「あのーですから、それはうちの仕事では」
奥から近藤巡査があらわれる。
近藤「鬼道部長」
鬼道「近藤……またか? またかあ、わかった、わかった。六花さん? こねこちゃんはうちであずかります!」
六花「ほ、ほんとうです??」
鬼道「ああ、ほんとうです。大事にしましょう」
★(9)
目になみだを浮かべる六花。
(おかさま、みていますか? ゆき、やりました! )
★(10)
LINE
百華 < 明日六時 よろしくお願いいたします
六花 < あいまでんしゃなのであとでへんしんします。
(ふう、あやまれてよかった)
★(11)
破壊されたハルカスが電車から見える。
六花のスマホが床へおちる。
隣のおじさん
「誰が死んだんやろうな」
六花は不快な表情をみせる。
★(12)
六花「ささあ?」
(どうしてこのおじさんは、ひとが死んだのに、うれしそうにそのことを話したの?
なんだかいやだなあ〜 轢かれた人は悩んでいたかもしれないのに。それなのに、このおじさんは、わらっています。こえが、わらっています)
★(13)
LINE
歌懸 < わたし、死ぬねん。
六花 < (^。^)またまた。
歌懸 <おそすぎたんやって、ボク。からだつらわあ、子どもうめられへんかったよ。
六花 < え
歌懸 <いまは奈良の大学病院におって、101号室。
★(14)
(つづき)
六花 < お、お見舞いにいきます。
歌懸 < ゆきちゃんはじめて句読点をうったなあ。
六花 < なにか欲しいものとかありますか。
歌懸 < なんにも。
歌懸 < 声はもうでえへんねんて。
★(16)
歌懸 < ゆきちゃん。リヒャルト・ワーグナーのニーベルングの指環をみよや。
六花 < ?
歌懸 < 奈良市内にある劇場で、日本初の演奏があるんやって。さいごくらいみときたいわあ。
六花 < わかりました! いきましょう!。
★(17)
自室。
「………………どうしてこんなことに」
(なんにもするきもちになりません。むなしい。)
「わたしにはなにができるんでしょう」
(あのそいねちゃんが病院)
「わたしは」
(とりあえず)
自慰をする六花。
★(19)
テレビから日経平均株価の情報が流れている。
タバコを灰皿へおしつける百華。
百華「いけ」
きょとんとした六花。
六花「いいんですかあ?」
★(20)
百華「手土産は羊羹」
〈To be continued……〉
🎻四幕
★(1)
『あなたは優しいはずです。わたし、百華さんの話しをきいてインターナショナルな社会は、わたしたちの世界を豊かにすると確信したのです!。あなたは、けして外国のかたを差別してはいけません。かなしいおもいは、だれだってつらいものなのです。』
★(2)
八月七日 猛暑 事務所
シュレッダーの音。
いつになくイライラした百華。
なぜか六花を睨みつけるも、素っ頓狂な顔の六花。
セブンスターが山積み。キーボードがうるさい。
「ち、、、はいれ。おそいんじゃよ!! インターホンは二回、二回、一回じゃから。次に間違えたときの、クビじゃ!」
★(3)
震える六花。
六花「はっ」
(こわい……殺される)
驚きどうてんし涙目になる六花。
百華「投資家がリスク回避に動いておる」
六花「はっう!」
百華「投資家はリスクを回避し、株式相場は下落しつづけ、日本のマスコミは、テロを報道しつづけとるからの。チャンスじゃな」
★(4)
六花「あ、あの病院へ」
無視する百華。
百華「日本製を売り込みたい中小企業へ、スパムをおくれ。スパムはの、インターナショナルと名前を入れるのじゃぞ。企業を装い振込を確認のちに、商品を個人へ無料と書いて配れ!」
六花「ご、ごめんなさい」
百華「は?」
★(5)
六花「でもでも。にんにくたべるを観に行くと昨日はおつたえしました!!」
はっとする百華。タバコを灰皿へ。
「悪いの。奈良県立医大病院じゃな?」
六花「でんしゃ」
百華「万葉まほろば線じゃよ」
★(6)
病院
白い壁をつたいあるく六花。
(笑顔です! そいねちゃんに泣いた顔はみせられません)
歌懸のパソコン「ゆきちゃんかなあ。ホーキング博士みたいやろお?」
六花(テクノロジーってすごいですし! まじですか‼︎⁈)
★(7)
歌懸「べんりやなあ」
(声もじっさいの声とちかくあります)
六花「あの寿司をお見舞いに買ってきたんですけれども‼︎」
歌懸「なまもんはあかんねん。腐るもん」
★(8)
歌懸「ほないこかあ」
六花「たのしみですね、ニンニクベルク」
歌懸(ゆきちゃんってあほのこなんかなあ)
……………………………………。
★(9)
国立奈良音楽劇場 シンフォニックホーム
歌懸「できたばかりやねん」
六花「わあ! まるで平城京みたいです‼︎」
歌懸「せやろかあ?」
★(10)
人集り。
(ううううう! 賢そうなかたたちばかりで場違いなわたし!)
★(11)
楽器編成
全四部を通じて共通であり、完全な四管編成である。フルート3、ピッコロ、オーボエ3、イングリッシュホルン、クラリネット3、バス・クラリネット、
★(12)
ファゴット3(ところによって出ない音域にコントラファゴットを使用)、ホルン8(うち4はワーグナーチューバに持ち替え)、トランペット3、バストランペット、トロンボーン3、コントラバストロンボーン、コントラバスチューバ、ティンパニ2人、打楽器奏者3人(シンバル、中太鼓、鉄琴、トライアングル、ハンマーなど)、ハープ6、弦5部(16型で第1ヴァイオリン16、第2ヴァイオリン16、ヴィオラ12、チェロ12、コントラバス8)、総計108名。更に鉄床12などのバンダなどが加わる。
★(13)
ばったり再会する。
鈴「💛」
青年「なんやなんや。偶然にもみたことあるレディがおるなあ!」
六花「お久しぶりです! たまたま会うなんて奇跡みたいでししし!」
歌懸は耳をすませている。
★(14)
ロビーにあるソファ。
鈴「💙」
青年「むかしこんな話しがあってん……
燃え盛る炎。木製の神殿は崩壊寸前。
姫 < はやくにげなさい!
王子 < 姫をおいてなんてわたしにはとてもできません!
姫 < このくにはもうだめ!
東門の武神は槍
南門の賢者は弓
本殿は皆殺し!もうたすからない!
王子 < 国を捨て、わずかな兵たちと、海を渡りましょう!
姫 < な、なるほどーー!
★(15)
六花「嘘ですし!」
青年「せやで、つくり話や!」
(つくり話? あやしい。つくり話なはずがないですし! だっ、だってお母さまは星狐なのです! そのご先祖様は神さまかお姫さまにきまってます)
歌懸「もぉはじまるでえ〜」
じゃあ、と青年と鈴は去る。
★(16)
かなり奥の席。咳の音。
六花「壇上があまり見えませんね」
(あ!)
歌懸は静かに佇む。
八倍双眼鏡を覗き込む六花。
ドイツ人たちの楽団
♬(壮大な演奏)
★(17)
夕焼け。
カラス <あほーあほー
歌懸「………………」
六花「……………」
歌懸は六華と顔を見合わせる。
二匹(ながい‼︎‼︎‼︎‼︎ながすぎる‼︎‼︎‼︎‼︎)
★(18)
二日後。
事務所。
百華「またか」
六花「ですからあ、どーんばーん、ずこーーーーーん だあああん」
百華「わからぬ」
六花「どーんばーん だああああwwww」
それより、と百華。
★(19)
六花「…………ですか」
百華「うむ」
六花「ほんとう、こんなにはやくて、なぜ、、、ふしぎです」
想いかえす百華。
百華「でていくとき、窓の先で唄っていた唄じゃが、こうな」
★(20)
(夕暮れのイメージ)
喪服姿、タバコをふかす百華、涙を瞳にためる六花。焼却場から白煙。
『ふりかえるさいわたしは、歌懸ちゃんが歌っているのをたしかにききました』
“色深く背なが衣は染めましを”
あなたの着物を色濃く染めるのでしたわ。そうすれば、(足柄の)坂に立つあなたの姿をはっきりと見ることができるのに。
さようなら。
【おわり】