さくららい制作日記

こころと創作について

悪業! 狐のお仕事(まとめ)

  舞台となるのは、現代の日本。

   この世界では、狐娘は約五年しか生きられません。なので高速で子どもを産み、大量のお金が必要なのです。そして、狐娘たちに大人気の職業といえば、もちろん泥棒!。

  狐娘たちは群れ、すなわち強盗団を結成しています。それぞれナワバリがあり、いつも争っています。

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  各泥棒チームのなかで最も長生きで強いものがボスです。

  大阪市天王寺区のボス。狐娘からは、南地区四丁目と呼ばれています。

 百華は八歳になる九尾の狐。

 とんでもなく感がよく、暴言魔のヘビースモーカー。仲間からの信頼は厚い。

 

  彼女らの生死はサイクルが短い。
  短いゆえに世代交代も早い。
  たまに突然変異も生まれてくるらしい。

 

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  漫画版の主人公。

  名は六花。ユキと読みます。

  かなりナイーブかつややメンヘラ気質。

  世間知らずだが、優しさのある娘です。

 

  こちらの物語をお読みくださいまし。

 

 ◆

 

  縁側で狐(おかあさん)と将棋を指していたのがまさかえらいひとだなんて、私は思わなかった。聞けば、その人は首相になったとか。


  ねえ、おかあさん。私は心で呟いた。
お金持ちの家庭は、どこか欠陥があって、金に汚くて、ずるがしこい人たちだなんて、そんな嘘をどうしてついたの。あの人たちは、笑わないはずじゃなかったの。
義経千本桜」の白狐の真似をする父親がでてくるはずじゃなかったの。
  葬式に集まった親族たちが遺産相続争いをするんじゃなかったの。
  私がつらいぶん、あの人たちもつらいんじゃ、なかったの。

 

 

「六花! なにぼさっとしておる」

「なんじゃよー! 具合でもわるくしたか?」

 

  私は、百華(くだら)さんの声におもわずおびえた。煙草でかすれたかすれた言葉は私にとって大嫌いなタイプのもの。
  お母さんのような、優しくて、静かなのが、この世界で一番なのに。

「やばいだろ……あいつ、あの狐娘(アイツラ)。こんなサイゼなんかで、泣き始めんなよ」

 

「のお、ユキ。えす理論をしっとるよな。ありゃな、ただの都市伝説(ヨタバナシ)じゃないぞ! くふふふ、まあ聞け! 秘密を守るには、誰も信じぬような冗談を流布するのがよく効くんじゃ〜!」

  私は馬鹿だからみんながなにを言っているのかがわからない。どうして、みんなが幸せになりたがらないのかが、ぜんぜんわからない。
  私に向けられた、百華さんの舌打ちにビクッとなり、私は心臓の痛みに気がついた。
「ぶらっくぼっくす? 展というのがあったのを覚えておるじゃろ? えす理論は世界を救う奇跡の発明じゃった! そうではあるまい、えす理論は世界を滅亡させる悪魔の発明じゃというのが、真相じゃ。えす理論を発表したのは、日本人じゃった。名前は鈴木!。鈴木理論!。研究は世界れゔぇるで秘匿とされておってのお、一般人にはけして明かされん。真相を知れば消される。……というのが真相じゃし、検証さいとが閉鎖されたのは、なにかの圧力があったからじゃの。くはははは!」

  爆笑している百華さんはいったいなんのことを言っているのだろう。
  えす理論ってなに?

  ぶらっくぼっくす展ってなに?

 

「真相の真相はというとのぉ! あれは、ふぇいくじゃ! あんなばかばかしい冗談にだれもがふりまわされたのじゃ! くふっ、えす理論は計画的に流布されておる」

  私はお母さんを想いだして、さっきまでほろほろと涙を流していたことを、忘れようとしていた。百華さんは、喉がかわいたのじゃ、と店員さんに水を要求している。
  お母さん、私は悪い人たちにかこまれています。はやく、なんとかしなきゃ普通の生活がしたい。お願いします……。
『悪業! 狐のお仕事』母の愛

 

んじゃ、次です。

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  彼は近藤正宗。

  巡査です。

 

百華に疑いをもっていますが、なかなか動けないでいる、正義の漢。

  百華に射殺されます。

 

  こちらの物語をお読みくださいまし。

 

◆ 

 

巡査になる前のこと。

私こと近藤正宗はある問題に悩んだ。


「ある事件に関しての話」
  配られた用紙には、そう書かれている。
「A〜E の五人が容疑者として浮かんだ。犯人は一人である。各容疑者は以下のように証言した。」
  頭を抱えるながら、続きを読む。
「調査後、このうち二人は嘘をついていることが分かった。犯人は次のうちだれであったか。」

A「犯人は D だ」
B「私はやっていない」
C「犯人は B か E だ」
D「A も B も嘘をついている」
E「C は嘘をついている」

  栃木県の高校を卒業し、私はすぐ警察官を目指した。
  成績は自慢ではないが、優秀だった。父は警察官、母は主婦の家で育った。新聞に掲載される凶悪事件を読むたびに煮えたぐる怒りが湧いた。絶対に、警察官になる。
だが、目の前にした採用試験に頭が痛くなる。時間がない。解答しなければ。考えろ、考えれば必ず解ける。


A は D を犯人だとした。
怪しい。疑いアリ。

次。
B は やっていないとした。
B は ひとまず保留。
ヤツはやっていないと主張するからだ。信じなくてどうする。

次。
C は B か E を犯人だとした。
怪しい。疑いアリ。

他人に罪を着せようと考えているヤツを信頼できない。

次。
D は A も B も嘘をついているとした。
疑いアリ。
B は無罪だと想定している。
従って、嘘をついているのは、D オマエだろう。つまり、
A C D は疑いアリ。

次。
E は C を嘘をついているとした。

A → D を否定。

C → B E を否定。

D → A B を否定。

E → C を否定。

A が犯人であるなば、A の証言は D に否定されているため、嘘。
B は本当。
C は E に否定されているため、嘘。
B は本当だから、D が証言していることは嘘だ。

となると、 C は嘘をついているため、否定されていない E の証言は本当。
疑いついているのは二人。
それゆえ、二人が嘘をついてた場合は、D しか犯人になりえない。

 

ーーーー。

答えは D。

タブン。

 

  私は問題を解き終えて、安心した。

 

  私は高校の先生と話した。

「近藤正宗です。この度、無事に採用試験に合格しました」

「なんじゃ、きゅうにきよって。うむ、さみしいかった……わけあるまい! ちがうぞ、たまには顔をださぬと、その……さみしいじゃろ」

「先生、この問題はどう解けばいいのか教えて下さい」

先生はにっこり笑って教えてくれた。
「これはの、背理法をつかうんじゃ。まあ、これこれ、このようにしての〜〜 ほうれ、できた」

「な、なるほど。勉強になりました。ありがとうございます」

「ぬしはかわらぬの〜」

おわり

 

ちなみに。

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これ。

 

今日はこのへんにしときましょう。

最後にクダラさんのありがたいお話を。

 

 

「たわけ、家電量販店の店員はのお!
会社から派遣さとるんじゃよ、おすすめきけば自社製品を売りつけるんじゃよ。かもになりょって! ばかめ! たわけ!」

「ばかめえ! むかしのお!地方へ赴任した役人じゃったか、やつら私服を肥やすのが仕事じゃから、任期を終えたころには、サラリーほども私腹を肥やしておった!サラリーと私腹をもってうきうき! ところが、ふねが沈んで“ サラリー” のほうが海の底となりて私腹がのこった!」

 

  悪業と書いてワルと読む。なんつうか、チャンピオン感がする。

 

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  あ、ちなみにです!。

  近藤正宗が通っていた高校の先生はお狐先生。

  いや、セルフパロディなんですが。

  お狐先生は健康な笑いを楽しむ、学園コメディなので、その話はまたどこかで!!。